ボージョレ地区の中でも特に標高の高い丘陵地帯に位置するル・ペレオン(Le Perréon)村。クリュ・ボージョレの認定こそ受けていませんが、その実力はフルーリーをはじめとする多くのクリュに匹敵すると評される特別なテロワールです。このル・ペレオン村を代表する造り手として世界から注目を集めているのが、ドメーヌ・ド・ラ・マドンヌです。
ベレール家が数世代にわたって所有するこのドメーヌは、現在兄弟のオリヴィエとブルーノ・ベレールが共同で運営しています。標高300〜500メートルの急斜面(傾斜30〜40度の区画も多く、トラクターの乗り入れが不可能なほど)に合計28ヘクタールのブドウ畑が広がり、90の小区画に分けられています。土壌はボージョレの個性を表すピンクのグラナイト(花崗岩の風化土)が主体。このミネラル豊かな土壌と標高がもたらす冷涼さが、ハングタイムの長いブドウを育み、複雑な香味の蓄積へとつながります。
ドメーヌ最大の財産は、一族が何世代にもわたって守り続けてきた古樹です。1880年代に植えられた樹齢120年以上の区画を含み、平均樹齢は35年。樹齢100年を超える古樹の区画では収量がわずか10〜20hl/haまで抑えられ、果実の凝縮度は格別です。栽培はリュット・レゾネ(減農薬農法)を基本とし、一部区画ではビオディナミ農法を実施。ボージョレでは先駆的なグリーン・ハーヴェスト(摘果)をいち早く導入し、収量をさらに絞ることで果実の質をより高めています。収穫は周囲のドメーヌより1〜2週間遅く、各区画の成熟度を見極めながら手作業で行います。
醸造面でもマドンヌは一線を画します。多くのヌーヴォーが採用するマセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)をあえて使わず、通常の赤ワインとほぼ同様の方法で10〜14日間という長期マセラシオンを行います。これにより果実とエキスがしっかりと抽出され、なめらかなタンニンと熟成に耐える骨格が生まれます。天然酵母のみを使用した自然発酵、月の満ち欠けに従った瓶詰めと、妥協のないアプローチが徹底されています。
その結果、マドンヌのヌーヴォーは「飲み急ぐ必要がない」という異色の存在となりました。ワインスペクテーター誌のボージョレ・ヌーヴォー特集では2005・2009・2014・2016年に第1位を獲得し、2009年ヴィンテージではヌーヴォー史上最高点となる88点を記録。ロバート・パーカーの『ワイン・バイヤーズ・ガイド』では「アウトスタンディング・プロデューサー(卓越した生産者)」として5つ星を獲得、ウォール・ストリート・ジャーナル誌でも高評価を受けるなど、その実力は世界の批評家に一致して認められています。また2024年ヴィンテージもワインスペクテーター誌ヌーヴォー特集で見事第1位を獲得しました。
2025年ヴィンテージは、ル・ペレオン村のピンクグラナイト土壌から生まれた完熟ガメイが原料。チェリー、ラズベリー、スミレとスパイスのアロマを持つ、豊かな果実味と柔らかなタンニンを備えたヌーヴォーです。