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ドルニエ・サイレン シラー 2019

ドルニエ・サイレン シラー 2019
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「また、あの黒髪の謎めいた女の夢を見ていた。その顔は見えなかったが、温かく歌うような声で見知らぬ名を呼ぶ声が聞こえた。野の薫草、熟れた果実、そしてすみれの香り——その存在は心を揺さぶった。彼は興奮のうちに目を覚ますと、夢の中で見たものをカンヴァスに描き起こした」

この言葉が「ドルニエ・サイレン」の全てを物語ります。ラベルを飾る絵画は、ドルニエ・ワイン・エステートの創業者クリストフ・ドルニエが自ら見た夢を描いた作品。芸術家として生きたクリストフのこのヴィジョンが、このシラーに「サイレン(魔女)」という名を与えました。

ドルニエ家はドイツ航空史にその名を刻む一族です。クリストフの父、クロード・ドルニエは20世紀初頭に金属製大型飛行機を世に送り出した航空工学の先駆者であり、1931年には当時世界最大の旅客機DO-Xをドイツからニューヨークへ飛ばした歴史的人物。その末子として1938年に生まれたクリストフは、父の遺伝子を継ぎながらも芸術の世界に進み、スイスとドイツの美術学校で独自のシンボリズム絵画のスタイルを磨きました。1990年代初頭、アパルトヘイト後の南アフリカへいち早く目を向けたクリストフは1694年に最初の入植が記録されるブラーウクリッペン渓谷の歴史ある農地に魅了され、1995年に最初の農場を購入。14年間の情熱を注ぎ、2002年に初ヴィンテージをリリースしました。2008年のクリストフ逝去後も家族経営が続き、2020年12月に南アフリカ・ワイン産業に多大な貢献をするルパート家へとオーナーシップが移りました。

エステートはステレンボッシュ山の麓、上部ブラーウクリッペン渓谷の3農場(フルーンクルーフ、ヘルデメール、ステレンスト)にまたがり、標高100〜200mの複数のアスペクトを持つブドウ畑が広がります。ステレンボッシュ山の高峰が大西洋からの冷たいケープ・ドクター(南東風)を留め、夏の日中の過熱を防ぎながらゆっくりとした果実の成熟を促します。また2006年以降は生物多様性・ワイン・イニシアチブ(BWI)に加盟し、固有のフィンボス(ケープ植生)の保全にも取り組んでいます。

サイレンのシラーはシモンスバーグの山腹に位置するヴィンヤードから生まれます。北東向きのこの区画は深い赤土に覆われていますが、シモンスバーグの山影のために朝の日差しが届くのが遅く、夏には南東の風が吹き抜けて涼しさを保ちます。収穫したブドウはオープン・ステンレスタンクで発酵。1日4回のポンプオーバーとパンチダウンで果実の風味とタンニンを丁寧に引き出し、マロラクティック発酵を経た後、使用済みのフランス産オーク樽で18ヵ月の熟成を重ねます。

グラスに注ぐと、赤いベリー、スパイス、すみれ、そしてユリの花の香りが官能的に広がります。パレットはクリーミーで繊細、赤スグリとシダーのニュアンスが溶け合い、白胡椒のスパイスが長く続くクリーンな余韻へと続きます。まさにクリストフの夢が描き出したあの神秘的なサイレンの姿——南東の風と花崗岩土壌が育んだ、ステレンボッシュの野を映す一本です。

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