Chartogne Taillet
シャルトーニュ・タイエ
生産者の概要
今世界で最も注目を集める若手醸造家の一人、アレクサンドル・タイエ。テロワール追求の集大成がここに。
3つのポイント
- 1683年にランス北西の村メルフィで栽培家として創業、60年代よりシャンパーニュ造りを開始。砂の多い土壌に粘土・石灰が複雑に交じり合う土壌は、区画毎のテロワールの多様性がずば抜けている。
- 現当主アレクサンドルは83年生まれの39歳、ジャック・セロスの下で修業を積んだ新世代で最も注目される男。
- 現代科学による緻密な土壌・環境分析と、古い文献につづられた優れた畑の記録や栽培法を迷いなくミクスチュアできるのが新世代の強みか。アレクサンドルのワインは、土地のエネルギーと純粋さに溢れている。
生産者のこだわり
間違いなく、今最も世界が注目する新世代シャンパーニュ生産者の筆頭だ。ジャック・セロスの下で修業した彼が偉大なる先達から学んだことは、テロワールを徹底的に追及、その世界をシャンパーニュという表現に昇華させることだ。メルフィ村という、知名度ではグランクリュの有名村の足元にも及ばない土地でありながら、「土壌の多様性」という視点でそのテロワールを見つめた場合に、その存在意義は一気に転換する。区画毎に土壌を徹底分析し、植樹する品種との適合性を判断、そして同時に古い文献に遺された職人的手法の融合により、区画毎に細かく仕込まれていくシャンパーニュのパーツ一つ一つは、驚くベき精度と的確さを獲得し、彼の目指す理想形を構築していく…。シャルトーニュ・タイエの凄さは、「探求心の極み」だ。≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタビュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』
シャルトーニュ・タイエ当主アレクサンドル・タイエさん
Q1.あなたの目指す「理想のシャンパーニュ」とは?
⇒シャンパーニュは生産者や人間が造り出すものではないと思う。シャンパーニュは第一に、土壌・地質・気候の関係性を記録しようと試みた自然そのものの帰結であり、ある一つの土地から生み出される明確な表現物だ。もし僕のシャンパーニュ造りにゴールがあるのなら、僕は所有する土地そのものを明確に味わいのワインを造り出すことになると思う。
我々が現在も今世紀中もいつでも認識するのは、生産者の名前ではなく、ワインの中に表現された「土地の味」。僕の仕事は何世紀か前に修道士によって名づけられたこの特有の土地に仕えること。栽培家になることは親になることに似ていると思うんだ。我々は子どもの性格を理解しながら、進むべき道を指し示す努力をするだけ。
子どもにしてはいけないのと同じように、ワインにも彼らが進みたがらない方向に行くことを強制すべきではないと思う。全て、彼らのDNAに元から書かれていることだからね。
Q2.あなたの「シャンパーニュ造りの哲学」を教えてください。
⇒僕はいつも土地の表現を妨げないように、出来るだけ自分の介入はソフトで最低限に抑えるように努力している。豊かさは始めから自然を構成する細部に備わっているから。
全ての植物・木・動物が、最も印象的でおいしいワインを生む手助けをしてくれる。僕はただ、全ての要素を自然に戻そうとしている。…つまり、ブドウ畑の中で営まれている自然のコミュニケーションを助けるだけ、ということだよ。
Q3.人生で一番衝撃を受けたワインは?
⇒一番のワインを選ぶのは、自分の子どもの中から1人だけ好きな子を選ぶことみたいに難しいな…。ごめん、やっぱり僕には選べないよ。
もし1人生産者を選べというのなら、アンセロム・セロス(ジャック・セロス現当主)。彼の1998年マグナムは特に記憶に残る1本だよ。
Q4.シャンパーニュ造りの工程の中で一番嬉しい瞬間は?
⇒ブドウ畑の中にいること。黙って、ただ静寂を感じると、とても元気になるんだ。
Q5.反対に、シャンパーニュを造る上で、今まで一番辛かったことは何か?
そしてそれをどうやって乗り越えたか?
⇒どんなにどす黒い悲しみの中にも明るい光は見えるもの。ワインに余計なプレッシャーやストレスを与えないように、私はいつも楽観的でいるようにしているんだ。僕たち生産者が辛い瞬間を過ごすこともあるけれど、それによってより強くなり、他者を助け、良い方向に進むことがでいるようになる。
それにしても、死はいつも人生で最もつらい出来事。僕の馬が6年前に亡くなったんだけど、その時は簡単に立ち直ることは出来なかったな…。
Q6.自分の造るシャンパーニュを一言で表現すると?
ただ一言…『メルフィ』!(※訳注:シャルトーニュ・タイエのある村の名前です)
Q7.自分にとって、RM(レコルタン・マニピュラン)とは何か?
⇒誤解を承知で正直に言うと、僕はこの言葉はワイン造り(ワイン生産者)を表わす上であまり良くない言葉だと思っているんだ。なぜなら、「マニピュラン」とは「操作すること」を意味するから。真実の姿に対して影響を与えることを画策し、変更し、動かしてしまう人物、ということになってしまう。
しかし、RMはワイン造りと向き合う大きな責任を持っている。醸造学や現代的な栽培技術を当てはめようとはせずに、テロワールのもたらす結果に誇りを持ち、何も変えないままの真のワインを発見することが全て。僕たちは造り手として土壌や環境を深く理解し、自然を「操作」するのではなく自然に「奉仕」するべき、と思うんだ。
どうでしょう…アレクサンドル・タイエならではの確固たる考え方が伝わってくる言葉の数々だと思います。彼の哲学は際立って「テロワール原理主義者」的。土の力を、生き物としての葡萄の力を信じ、それをそのままボトルの中に閉じ込めようとする、献身的な姿勢を感じました。
そんな彼のワイン造りに興味が沸いたら…是非、この1本を試してみてください。